産業医インタビューVol.1 白岡 亮平 先生(前編)

弊社代表で、現役の産業医でもある白岡亮平先生に産業医のお仕事についてインタビューしました。

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白岡 亮平
医療法人社団ナイズ 理事長
キャップスクリニック 総院長
メディカルフィットネスラボラトリー株式会社 代表取締役最高医療責任者

産業医日本小児科学会認定小児科専門医 / 日本医師会認定健康スポーツ医
日本体育協会認定スポーツドクター/NASM-PES(米国スポーツトレーナー)/加圧トレーニングインストラクター

 

【略歴】   
1998年3月  慶應義塾高等学校卒業            2004年3月  慶應義塾大学医学部卒業
さいたま市立病院、慶應義塾大学病院等で勤務医として臨床に従事。
2012年9月  医療法人社団ナイズ設立、理事長就任
2014年12月 メディカルフィットネスラボラトリー株式会社設立 代表取締役最高医療責任者就任。
現在、ヤフー株式会社統括産業医、その他IT企業など数社の嘱託産業医として、産業衛生に従事。

 
産業医を始めたきっかけ

 元々、都内の小児科クリニックで小児科医として勤務しており、子供たちの健康を常日頃から見ていました。あるお子さんの診療をしていた時、お母さんが疲れ切った様子であることに気が付きました。その様子がお子さんにも伝わっているように見え、些細なことでも非常に感情の波が激しい状態で受診されました。

 診察の中で、「お母さんも大変ですよね。」と声をかけると、仕事での様々な悩みを話してくれました。お父さん・お母さん自身が仕事の悩みを抱えた状態だと、子育てや家族のコンディションにも大きく影響する可能性があることを実感しました。そのような経験から、子供たちの健康を作る上では、お父さん・お母さん自身の健康もとても大事だと感じ、産業医としてのキャリアも考えるようになりました。

 

働いている人の中には一見元気に見える人でも、肉体面、メンタル面で何かしらの不調を抱えていることが多いとも感じるようになりました。すぐには結果の出ない分野かもしれませんが、産業医の仕事は「小さな不調を未然に解決し、世の中を元気にすることができる」非常に大事な役割を担っているのではないかと思うに至りました。

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現在も小児科医として、子ども・保護者の方と日々接しています

 また、自分自身も医療法人や企業を経営している中で、働いている人の健康が組織のパフォーマンスや雰囲気に直結しているという実感を強くもっていました。ただ、どうやってそれを実現していけばよいかは、経営者も働いている当事者たちも知見がない場合も多い。それをサポートする存在がいることは企業にとってもメリットが大きいと思います。

 企業が健全で元気があるいうのは働いている人にもいろんな意味で良いことです。働きやすいのはもちろんですが、業績が良くなれば従業員に還元できる部分が大きくなります。産業保健スタッフ・産業医は、企業にとっても従業員にとっても重要な存在であり、社会からも必要とされていると感じました。

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2012年からスタートした医療法人ナイズは、現在6クリニック、総スタッフ約100名。


産業医をする上で大事にしてる2つのこと

 1つは、「コミュニケーション」です。
産業医は、臨床医と違って診断をするわけではありません。社員が働ける状況かどうかということを客観的に判断したり、会社がその社員に対してどのような安全配慮が必要なのかを判断したりすることが多くあります。そのプロセスでは、「言葉を使ったコミュニケーション」がとても大事になります。悩んでいる社員の方から情報を引き出したり、理解してもらったりするには、「スタンス」はもちろんのこと「技術」も欠かせません。言葉の選び方一つひとつにも気を使ってコミュニケーションを取ることを意識しています。

 もう一つ大事にしているのは、「中立性」です。
職場では、企業と従業員の利害が一致しないことも往々にして起こりえます。企業は利益を追求しがちになりますし、働いている個人は自分自身にとって何が良いかを基準に判断・行動します。時に相反するような状況の中で、産業医として中立的に、「健康」という軸を持ちながら、両者にとって本当に良いソリューションは何か、を判断することが求められるのです。産業医は、企業と社員のどちらか一方に肩入れせず、中立であるべきですが、それは単にドライであるということではなく、両者のことを深く理解しようとする姿勢、同時に双方にとっても「味方」のような存在であるべきだと考えています。

産業医に求められる幅広い知識と対応力

  企業設立背景や事業内容、労務や人事の知識、一般常識など臨床ではあまり使わないような知識や感覚を持つことで、適切な判断ができるようになります。そのための勉強は日頃から意識して行うようにしています。
 また、一言に「企業」と言っても、規模や成長のフェーズによっても、現実的に出来ることが変わってきます。従業員が何千人もいるような大企業で行っていることを、これから大きくなろうとしているスタートアップ企業に当てはめようとしてもうまく行かないことが多い。クライアント企業から人的・金銭的・時間的なリソースを教えていただいた上で、解決策を提案し、一緒実行していこうとする姿勢も必要ですね。

 特に、組織が大きくなり従業員50名を超えてくると、法定義務も増え、衛生委員会の立ち上げやストレチェックの実施など、やるべきことが増加します。どこから手をつけていいのか分からず途方にくれているご担当者様も多いので、「通常はこのようにやることが多いですよ」「他企業ではこういう風にやっていますよ」というのを事例を用いてご紹介し、現実感をもって検討・準備を進めていただけるようなご提案をするようにしています。

■労働衛生に取り組む企業のメリット

 時々「産業医を導入して何が変わるのか?」と疑問に感じられる企業様もいらっしゃいます。確かに、産業衛生は直接的に利益を出すわけではありません。ただ、回り回って利益に繋がる組織に変えていくきっかけにはなると信じております。人出不足の中で社員の離職や採用に困っている企業様は多くいらっしゃいます。日々のコンディションケアや健康診断の事後措置、ストレスチェックを通して、従業員の体調・心の面のケアもできれば、入社者がスムーズに適応出来る組織、辞めにくくなる組織作りができます。人が定着すれば生産性もあがりますし、本人の満足感やモチベーションとも密接に関連しています。そして、最終的には会社の利益に必ず繋がるはずです。

 また、「採用力アップ」になりますよね。最近では、応募者も従業員のケアをきちんとしている企業がどうかを厳しい目でチェックするので、きちんとケアしていることは、応募者へのアピール材料の一つになると思います。

産業医をやっていて嬉しかったこと

 やはり社員の方が元気になって組織でパフォーマンスを出せている状況が一番嬉しいですね。不調になってしまった社員の方に、面談などで様々なサポートをしたり、専門家に繋いだりしているうちに、段々と元のパフォーマンスを出せるようになってきたケースを多く見てきました。本人から、「あの時のサポートがあったから今がある」といわれると嬉しいですし、企業側にとっても大事な社員を失わせずに済んで良かったと心から感じます。

 上司にも同僚にも相談できず、一人で悩んでいる社員は結構いると感じます。
産業衛生スタッフ・産業医は得た情報を本人の同意無しで企業側に漏らすことはないので、仕事面に関わらず様々な悩みを気兼ねなく相談してくれることが多々あります。本人はいきなり病院に行くのはハードルが高いし、そこまで深刻ではない思っている場合であっても、「ちょっと話を聞いて欲しい」「アドバイスが欲しい」という場合の相談窓口として活用してもらえればといいなと思っています。

 

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産業医インタビューVol.1 白岡 亮平 先生(後編) - メディカルフィットネスラボラトリー公式ブログ  

 

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